skoharaの日記

日々のいろいろ

揺籃の星

揺籃の星 上 (創元SF文庫)
J.P.ホーガン新作を読了。今までのホーガン作品のいろいろな部分が入っていて初めて読む人は新鮮かもしれませんが、全部読んでいる自分はまあいつもの話しか、という感じ。「星を継ぐもの」シリーズ+「断絶への航海」の世界+「インフィニティリミテッド」系。合体してますね。でも、カタストロフィものというのはホーガンには珍しいかも。僕はその手も結構好んで読むし、デイアフタートゥモローも見たので、そういうのが好きな人はいいかも。

しかし、解説には納得いかないので、自分なりの解説を書きます。
これはヴェリコフスキーの「衝突する宇宙」をモチーフにしていますが、それが正しいということを言いたいために書いた小説ではないはず*1。そうではなく、ホーガンがこれまでに(そしてこの本でも)書いているように科学者が一度定まった定説にどんなことがあってもそれにしがみついてしまう、ということを読者に対して試している小説だと思う。普通の小説では、「既存の学会って頑固だね〜」と読者はあっさり主人公に肩入れしてしまい、なぜ頑固になってしまうのか、の部分が共感できない。自分は柔軟な、新しい考えを受け入れることができる、と読者は思う。しかし、今回は何しろ「衝突する宇宙」。多少、科学的知識があるならそう簡単には受け入れられない。小説中では実際にその現象が起こっている。そして、新しい理論なども出てくる。そうなると古い考えを捨てなければいけないのに、読者ですらなかなか捨てることが出来ない。で、「ね、古い考えを捨てるのは大変でしょ?」とホーガンは言いたいのだと思う。うがった見方すぎ?

*1:この本は「小説」であって「ノンフィクション」として書かれている本ではない、念のため