skoharaの日記

日々のいろいろ

トゥデイ

トゥデイ―すべてが壊れる午前零時

トゥデイ―すべてが壊れる午前零時

ふと本屋で目にとまり、どんな本か見てみるとタイムスリップ物らしい。奥付見ると今年6月には出ていたらしいが、今まで目にしなかったのがちょっと不安。とはいえ、速攻で読んでみました。いや、これは読ませる。面白かったです。

内容的にはいわゆるリプレイ物にあたります。日本にはリプレイ物の名作が多く、最近では乾くるみの「リピート」ISBN:4163233504、推理物では 西澤 保彦の「七回死んだ男」ISBN:4062638606ラノベ系では桜坂洋の「All You need is KillISBN:4086302195 とかいろいろありますが、これだけの大作 ハードカバー 2段組629ページというのはなかなかないです。そしてそれを一気に読ませる。読みやすいながらも理論もきっちり押さえてちゃんとSFになってます。

高校の演劇部をめぐる話しですが、その話し自体がリプレイ抜きでもしっかりと面白い。軸はやっぱり恋愛系ですがSFでしか出来ないことをやってるという感じがします。リプレイ自体もありきたりではなく、純粋にタイムトラベル好きの視点から見ても良作。リプレイは一部の人間だけが陥るからリプレイと認識できるのですが、そのリプレイヤーがウイルス的に感染していく、というのが面白い。

また、それらリプレイ現象を高見から見ている謎の少女&別世界。まあ、これだけならありがちだけど、その別世界が完全に別世界という感じではなく、極めて普通な現実世界、というのも謎をあおります。

長いんで最後は種明かし的にちょっとくどい面はあるけど、そこは丁寧な舞台裏解説ということで、ある意味すっきりするし、しっかりと考えられている(とはいえ、高望みは禁物ですが)。SF的には「多世界理論や量子力学を駆使して」とあるけど、難しい部分は無いです。やはりストーリー的な面白さがこの小説の醍醐味ですね。

作者・安田 賢司 はこれがデビュー作だそうですが、今後が楽しみな一作といえます。