skoharaの日記

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書籍:スポーツ中継―知られざるテレビマンたちの矜恃

スポーツ中継―知られざるテレビマンたちの矜恃

スポーツ中継―知られざるテレビマンたちの矜恃

たまたま見つけた本だけれどもスポーツファンには是非読んでもらいたい本だと思いました。特にTVでよくスポーツを見る人にとってはとても面白く読めると思います。

この本は、主に日本テレビの中継の歴史、それも実況は無視し、ディレクティングやプロデューサーに焦点を当てています。最初はプロ野球中継を2台のカメラで撮っていた時代から始まり、マラソンなどのロードレース中継、そして箱根駅伝中継の死闘、サッカーでは高校サッカートヨタカップを放送することになった背景、そして91年東京の世界陸上

技術の発展が不可能を可能にし、次第に中継も楽になるのですが、そこには技術に頼りだして本来の筋がおろそかになる失敗も。無駄なスロー再生やアップ、スポーツファンはそういうことを嫌というほど見てきていますが、実際にはディレクターもそれを使いすぎないように戒めながらも、結局使いすぎてしまう。サッカー中継にしてもスローインからの切り替えシーンで引きが遅くなってしまうことなどがたまにありますが、こういうのはやっぱり「失敗」とちゃんと意識されているんだな、と思いました。

91年東京の世界陸上、ルイスとバレルの100m決勝の話も当然ありましたが、やはりパウエルとルイスの幅跳び。この中継の話は面白いですね。私は何度も見たので、良く覚えていますが、「パウエルの怒ったような表情」あれを撮れたのはまさに英断から生まれていました。このときの中継は最高だったと記憶していましたが、業界人もその認識があるようで、やっぱりな、という感じです。

悲しさと希望を覚えるのはエピローグ。先人達が築いてきたスポーツ王国も今の日テレでは寂しい限り。しかし、91年世界陸上の中継を仕切っていた人は今やスカパーでJリーグ全試合中継を実現させ、新たな希望を切り開いています。そこに出てくる「放送責任」の言葉。せっかく中継権をとっても、その放送にどれだけの思い入れがあるのか。そうではない放送があるということですね。

偶然見つけた本ですが、いや、これは読んで良かったです。