ハーモニー

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

虐殺器官（asin:4152088311）の作者・伊藤計劃の新作。多くのＳＦファンと違って虐殺器官をそれほどは評価しない僕だけど（いや普通に面白いとは思うけど）こっちはすごい。そして怖い。

基本はユートピア・ディストピア社会もの、と言ってしまうとちょっと違う気もする。WatchMeによって生体監視を達成した社会を舞台に、プロローグとなる少女時代を経て主人公が大人になってからは流れはむしろミステリー的に進む。そういう意味ではとても読みやすい。見かけと違って。

というのは、この本を手にした人がまず驚くのはタグ。本書内にタグがちりばめられている。いわばhtml（この本ではetmlという設定だけど）のソースが出ている感じ。といってもそれほど多くないけど。その意味はもちろんあるのだけど、なにか小難しいＳＦかと誤解してしまうともったいない。そんなことは全くなくて普通に読んでいけばＯＫ。なんならタグを無視しても問題はない(なんでタグが付いているか・・読めば分かります)。

でもこの本はやはり怖い。ホラーと言ってもいい。そういうシーンもあるし。引き込まれて一気に読んでしまった本です。

虐殺器官と直接的には繋がってませんので、虐殺器官を読んでなくてもＯＫです。でも、なにかつながりを感じさせるような記述もあり。それも含め、「おや？これは」と思うような表現が結構あって本筋とは関係ないところですが楽しめます。